今も昔も変わらない雰囲気と味

 

 開店は1962(昭和37)年である。青森市役所横に店を構えて今年で52年目。現在、佐藤周一さん(57)がオーナーだが、もともとは父の正男さんが「さとうコーヒー店」としてオープン。コーヒー1杯30円でカウンター7席だけの小さな喫茶店からのスタートだった。

 当時、市内には大型の喫茶店が6店舗もあった時代。夫婦2人でこつこつと働き、その人柄もあってサラリーマンや女性客などのたくさんの常連客に親しまれてきた。そうしたお客さんたちに支えられ、今では青森市内で最も古い喫茶店になっている。そして、1965(昭和40)年に店名を「ばんかむさとう珈琲店」に変えた。「ばん」とはアラビア語で豆を意味し、「かむ」は液体のことを指すのだという。

「何十年振りかで来られたお客さんが、ほとんど変わっていない店内の雰囲気に、とても懐かしそうにしていかれる方もたまにいます」と周一さん。店を手伝うようになったのは20歳の時で、現在の店もその時に改装して広くした。現在奥さんと2人で切り盛りしている。

 


 

店内もそうだが、コーヒーの味も当初から変わっていない。「美味しいコーヒーを飲んでもらいたい」という思いもあって、ネル・ドリップにこだわっている。深みが増しコクが出るからだ。焙煎豆はミディアムで仕入れているが、それを挽いてネルのこし袋でいれたコーヒーは、酸味・苦味・甘味のバランスがほどよくとれてとても飲みやすい。

 お昼になると、女性客やサラリーマンでカウンターやテーブル席が埋め尽くされていく。トーストやホットサンドなどのパンを使った軽食のみだが、これも食べ物を極力おさえて、コーヒーの香りの妨げにならないように。あくまでもメニューの主役はコーヒーで、それを味わってもらいたいというのも昔から変わらない姿勢なのだ。

 ランチセットには様々なパンメニューがあり、ホットサンドにサラダ、手作りヨーグルトゼリーにコーヒーが付く。単品のホットサンドもあって、なかでも「メキシカンサンド」が人気なのだという。

 

 

 いつ来ても同じ風景が出迎えてくれる空間は、心を和ませてくれる。お気に入りの席で本を読むお客さんもいて、静かに過ごせる雰囲気も大きな魅力だ。

「コーヒーが美味しいと言ってくれることも嬉しいんですが、ここで気持ちをリフレッシュして頂いたり、ゆったりと落ち着いた時間を過ごして欲しい」と周一さんは、丁寧にコーヒーをいれながら話してくれた。

(記事内の情報は2014年取材当時のものです)

 

住所/青森市中央1-26-1

電話/017-722-3809